若手調査官が国税局調査部で身に着けておきたいこと①
こんにちは。東京・練馬の税理士、村田龍矢です。この記事をご覧いただいて、ありがとうございます。
ぼ~っとしていると、後手後手に・・・
調査部での調査は、税務署の調査と違って「とにかく長い」。
調査の流れについては、参考先の記事をご覧いただければと思いますが、最初の打ち合わせに伺ってから調査終了の通知をするまで足掛け4カ月程度かかることは普通です。
調査1社あたりでこれだけかかります。
そして、調査部では、担当班ごとにおおむね毎月1社ずつ新しく調査を行いますので、複数社の調査を並行して進めているというのが実態。1社の調査を完全に終わらせて次の会社へ、というわけではありません。
さらに、調査部の内部で様々な仕事の処理期限が設けられていますので、目の前の仕事に集中していると後手後手に回ってエライ目に会います。
「この案件はいつまでに処理が終わるのか?」と上司に聞かれて、「え~と、わかりません」ではお話にならないのです。
期限から「逆算」して考える
1件ごとの税務調査について、「期限」を意識してそこから逆算して仕事のスケジュールを考えることが大事です。
例えば、ある会社に4週間を使って調査に伺うとします。
この場合、理想的な進め方としては・・・
第4週目の段階で会社側と修正項目について合意しておきたい。
→そのためには第4週目には会社側に説明できるだけの証拠資料を手元に用意しておく必要がある。
→そうなると、実質的に調査で書類やヒアリングなどで動けるのは第3週目まで。つまり、第3週目の段階で何らかの申告誤りを把握しておく必要があるということ。
→特に、地方の支店や工場などに出張して調査をする場合は、第3週目が限界だろう。
→とすれば、早めに出張の対象になる支店や工場について会社側に伝えておく必要がある。前週に言うと遅いか。第1週目には出張先の拠点がどこかを伝えて、日程調整依頼をしたい。
→第3週目に地方出張する前提なら、少なくとも第2週目の時点で地方出張の際に何の資料を見たいのか、誰に話を聞きたいのかを会社側に伝えておく必要がある。第2週目は、地方出張の準備もせねば。
→そのために、第1週の時点で本社で各種資料や担当部署にヒアリングを行い、対象会社の「どこを」「何を」調査するのかを絞り込む。
→調査開始前の「打ち合わせ」で、調査スタート段階であらかじめ資料をそろえてもらうように、ヒアリングの日程を固めてもらえるようにお願いしておく。
とまぁ、こんな感じです。
大変そうですか?私も最初は非常に大変でした。
「今週はここまでできたから、来週はこういうことをしよう」
と考えてしまうと、日程が押されてしまうことが往々にしてあるのです。
そうではなく、
「来週こういうことをしたいから、今週は何をやっておけばいいのか」
と考えることなのです。
「逆算」の範囲をもっと広げる
上に書いたのは、会社に調査に伺っているときの考え方です。
これができるようになると、逆算の範囲をもっと広げることができるようになります。
調査部の場合は、おおむね毎月1件ずつ違う会社に調査に伺います。
そうすると、
今のA社に調査に伺いながら、同時並行で来月調査に伺うB社に調査開始前の「打ち合わせ」をしに行きます。
そうすると、「打ち合わせ」の日程を調整する必要がありますので、A社に調査に伺いながら、B社に連絡を取ることになります。
つまり、B社の調査に伺うことから逆算して、A社の調査中にB社の調査についても自分たちの動き方を考えておく必要があるのです。
さらに。A社へお邪魔する期間が終わっても、A社の調査についての報告書を部内で作成する必要があります。この報告書の決裁が部内で終わって、初めて税務調査が1件終わりになります。
会社に伺う時期が終わってすぐに報告書を作るとして、少なくとも決裁に2カ月かかることを前提に、〇月までに報告書の決裁が終わるようにしたい。
→そのためには、〇月までに第1案の報告書を提出して決裁ルートに乗っけておきたい。
→スムーズに報告書を作成するためには、調査の第4週の段階で修正項目を会社側と合意して証拠資料をそろえておく必要があるな。
という形で、つながります。
このように、調査が終了する時期まで想定して、いつ頃に何をしておけばいいのかをあらかじめ考えておくと調査部での仕事はスムーズになるのです。